赤い妄想綴り
□温泉に行こう!
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「幸村の好きなもの?」
信玄は姫の突然の問いにその美しい顔を凝視したが
姫は真剣そのものである。
「いつも世話をかけているので、たまには
お返しがしたいのですが
直接聞いても『そんな事お考えになる必要はありません』と
いわれそうですし。」
さすが姫、ようお分かりじゃ…と思いつつ
信玄は腕組みして考え込んだ。
「好きなもの…。」
健康的なと言うか健全な生活を送って来た幸村には
食べ物には好き嫌いもないが
いくら庶民的な家柄であったとしても一国の姫、
厨房に入り料理などできぬだろうし
かと言って「すきなものは決まっておろう、姫しかおらぬ」と
物分り良い年寄りじみて言うのもちょっとシャクに触る。
「そうじゃな…幸村は温泉好きであった。
最近は戦が忙しくいっておらぬから
ゆっくり出かけてはどうかの?」
ニヤリと意味ありげに信玄が言った。