赤い妄想綴り

□花
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その香りは、いつも姫が焚き染めている香とは違う、もっと強い主張を持っていた。
部屋に入るなり不審げな表情をする幸村に
姫はああ、と笑いながら言った。

「先ほど、信玄様が届けて下さった百合の花ですよ。」

示された方を見ると見事な大輪の百合が一抱えほど、
大きな花器に生けられている。

「香りは強いけれど、真っ白で美しい花…。」

姫が嬉しそうに目を細める。

女性に花を贈るなどと言う発想は皆無な幸村は
「花がお好きですか?」
などと質問にもならない事を聞いた。

「花が嫌いな女子がおりましょうか。
見ていて心安らぎます。」
姫が笑いながら答え、その答えにも
ふーん、そんなものですか…と理解しがたい表情をする。

「拙者は幼い頃から武芸一筋でしたから
花をじっと見た事などございませんでしたが…。」
「美しいとか思いませんか?」
「…。」

正直に黙ってしまった幸村に、姫は
「いつか花畑にでも行ってゆっくり花を
愛でてみましょう。
お天気の良い日に。信玄様にお願いしてみます。」
と微笑んだ。

はい、と一応のお辞儀はしたものの、
幸村は少し寂しげな顔をした
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