新婚さん

□新婚さんいらっしゃい 3
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ども、こんばんわ。
真田十勇士の佐助です。
今日はかねてより計画していた通り、
幸村様に変化して帰宅してみようと思います。

鼻の下伸ばした主は絶対見たくありませんが
あの姫がどんな風に幸村様をあつかうのか
拝見したいと思いまして。

ん?決して野次馬根性ではございません。
べ、別に姫を困らせようと思ってるわけでもありません。
俺はただ、幸村様がちゃんと主人らしく
暮らしてるのかと心配なだけで…
ああもう面倒だから、才蔵がなにやら幸村様に
武道話を持ちかけてる隙に行きます!!



さてさて幸村様のお屋敷が見えて来ましたよ。
完璧な変化は、決して見破られない自信がある。

コホン、とまず声色を変えて。
いつも何と言って帰るのだろう?

「只今戻りました。」
うん、多分これだな。
気配を察して姫が飛んで来た来た。
「おかえりなさい、幸村!」
へー、呼び捨て。
嬉しそうに走る寄るなんて、案外可愛いところあるんだ。

「姫、変わりはございませんでしたか。」
でもまだ敬語なんだろうね、幸村様は。
俺は履物を脱ぎながら聞いた。
姫も違和感ない顔してる。
「はい。今日は幸村の好物だと聞いた
『とろろ汁』を作ったのですよ。すぐ
夕餉の支度をしますね。」
…姫の手作り…遠慮したいが。
「好きだと言ったわよね?食べるでしょ?」
姫が俺の心を読んだかのようにこちらを向いてる。
「え、あ、はい。」
…なんか迫力増してるんだけど。
「でもその前に。」
姫はにっこり笑った。
「いつものように!お風呂を焚いて下さいね。
それから台所の薪がなくなりそうですから
補充して下さいませ。
それが終ったら居間のお掃除、それから…。」
「はい?」
姫の要求は果てしなく続いた。



…幸村様、毎日こんな事やらされてるのか?
薪を運びながら段々腹が立ってきた。
なにこれ、一家の主の威厳とかないじゃん?
愛し合って婚姻した結果がこれ?
こんな状態だから幸村様と来たら
定時ですっ飛んで帰ってたわけ?
これは使用人の仕事でしょうが!
俺は薪を地面にばら撒き、母屋に突進した。

「姫!一言物申す!」
台所からズカズカと上がり、食事の間の
障子を勢い良く開けると


そこには

「おお、佐助。」
「あら、もう薪は運んだのですか?
ご苦労様。」
向かい合って座る幸村様と姫が居た。

「…バレてたのですか…。」
俺は急に力が抜けて、その場に座り込んだ。
姫がふふふ、と可愛らしく笑う。
「いつから?」
「初めからですよ。」
俺が驚いてると姫は頬を染めながら続けた。
「だって幸村は帰ったらいつもその場で…。」
「姫!」
慌てて止めようとする幸村様の顔も赤い。
俺は目が点になる。

なんだこの ばかっぷる。

「さ、さあ、佐助もこちらに来て座れ。
姫のとろろ汁を頂くがい。」
「いいえっっお邪魔でしょうからっっ
俺はこれにて退散っっっ!!」

俺は幸村様に
最後まで言わせずに立ち上がった。
が、ふと姫の仕草が気になって
さすっている手を見た。
その指は赤く腫れて、いかにも痒そうだ。

…幸村様の好物を作ろうとしてかぶれたのか…

本当ならば、そんな事をする必要もないのに
姫はあえて幸村様のために自らの手を。

「…せっかくですから、頂きます。」
俺は座りなおした。


そして 後悔した。

…ざりざり言ってるよ、この汁…
皮、ちゃんと剥けよ姫…てか剥いてないのに
かぶれたのかよ、しょーもねーな…。

「でもこうしていると本当に見事な
変化ですね。」
俺が涙目で飲み込んでると姫が幸村様と
俺とを見比べて言った。
あ、変化解くの忘れてた。
「外見だけでは見分けがつきませんか。」
幸村様が聞くと姫がブンブン首を振る。
「妻である私に見分けがつかぬはずが
ありません。
私の目には真実の幸村がはっきりと見えます。」
「さすがは我が姫。俺の目にうつるのも
姫だけです。」
俺の目の前で手を握ってるよ。

なにこの  おおばかっぷる。

もういいよ、勝手にやってて下さい。

「ご馳走様でした。それではこれにて失礼!」

俺は見つめあう二人に聞いてないだろう台詞を残して
その場を去った。
今日は姫にしてやられたけど、次回は絶対負けない。うん。

…ふん。



'08'12

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