新婚さん

□新婚さんいらっしゃい 4
1ページ/2ページ

ある日、いつものように幸村が定時で帰宅すると
伊達政宗と信玄公が居間で酒を飲んでいた。

「…。」

一瞬、事態が飲み込めず固まる幸村に、酌をしていた姫が立ち上がった。
「お帰りなさいませ。ごめんなさい、ご帰宅に気づきませんでした。」
「…い、いえ、それは良いのですが…これは…いったい…?」
「それが良くわからないのです…さきほど突然おいでになって…。」

「なんだなんだ、こそこそと?そんなとこに突っ立ってないで、幸村も飲め!
奥州の名酒を持参してやったのだぞ。」
二人が小声で会話していると政宗が叫んだ。
「待っておったぞ。さあ、早く座れ。」
信玄もすっかり寛いだ様子で杯を片手に手招きする。
自分の家でありながら、なんとも妙な具合に促されて
取り合えず並んだ二人の向かいに座ると、姫が幸村の分の支度を、と部屋を出て行った。

「…ふん。さぞかし気分の良いものだろうな、幸村。」
その姿を見送りながら杯を空けて、自ら次を注ぎ政宗がきつい口調で言った。
「姫を娶って、毎日楽しかろう?」
「もう酔ったのか、伊達くん?そう幸村をからかうな。」
信玄が苦笑いする。
「これはいったい、何の会合にございますか。拙者は何も聞いておりませんが。」
政宗の台詞はまったく無視して幸村が信玄に詰め寄った。
「お屋形では話せぬ、内密な会談でございましょうか?」
「ううむ、お前はどうも固くていかん。息抜きじゃ、息抜き。」
信玄が眉をしかめて政宗から銚子を取り上げると自分の杯を幸村に渡して
さあ飲め、注ぐぞ、と言う仕草をした。
「伊達くんが遊びに来たついでに姫の顔が見たいと言うから案内したのだ。
面白くはなかろうが、まあ、戦国一の美姫を妻にしたのだからこれくらい我慢せい。」

「…はぁ。」
そんな事言われても納得できるはずもないが、そこへ追い討ちをかけるように
「で?どうなんだ?新婚生活は?」
と答えようもない質問を政宗が投げて来た。

「…ど…。」
当然幸村が言葉に詰まると信玄が
「だーかーらー、伊達くん、初心なこやつをからかうでない。
仲良くいちゃいちゃしとるわ。なぁ、幸村?」
と庇ってるのか煽ってるのか分からない発言をした。
「妻帯者が初心も何もあるものか。…いや…?」
ふてくされたように口を尖らせていた政宗が、にやりと笑う。

「…お前、姫を満足させてるのか?」
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ