薄赤い妄想綴り

□浮遊
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目をつぶっていると、まるで空を飛んでいるかのような感覚を覚える。

ふわふわとゆっくり…あてもなく漂う。

けれどそれは決して不安なものではなくて
かえって心満たされる、穏やかな時間だった。


「幸村…。」

頭の上で声がして、幸村は目を開けた。
すると天井を背景に姫が微笑みながら覗き込んでいる。
「幸村、時間は大丈夫ですか…?先ほど
信玄様がお呼びだとお声がかかっていたけれど。」
少し顔を近づけて小さな声で告げる姫の髪に手を差し入れて
幸村はそのままグイと力を入れた。
頭を引き寄せられた形になった姫の唇が
幸村のそれと重なる。
「…もう少しだけ、このままで…。姫の膝枕が
あまりに…心地良く離れられません。」
少し唇を離しては呟く。
「幸村ったら…。」
少し頬を染め、それでも膝にある幸村の頭を
抱きしめて姫が続けた。
「最近の幸村は変わりましたね…。」
こうして二人でいても、もう目をそらしたり
慌てて逃げ出したりはしない。

…あの夜から。

その姫の台詞に、幸村がガバッと起き上がった。
「それは…。」
幸村の顔も紅潮しているが、目はしっかりと
姫の瞳を捕らえている。
「…それは、姫があまりに良い声をお聞かせ下さるから…で…。」
言いながら抱き寄せると、再び唇を求める。
そして今度は重ねるだけでなく熱い舌を差し入れてきた。
「ん…。」
そうしながらも着物の上から背中を撫でられて姫がゾクン、と震える。
そしてつい今しがたまで己が頭を預けていた膝の間にも
幸村の長い指が入った。
「あぁ…駄目、よ…幸村。」
その指がゆっくりと白い肌を這いながら
奥へと進むのを姫はきゅっ、と膝を合わせて拒んだ。
けれどもそんな事で怯む幸村ではない。
少し強く首筋に吸い付きながら、ぐいと指を動かす。
「…ゆ、幸村…やめ…。」

まだ日も高く、いくら姫に与えられている部屋とは言え
いつ誰が来るとも知れず。

「…あ…!あんん…っ!」
けれどそんな心配はいつまでもしていられなかった。
幸村の指が、姫の敏感な部分を捉えたのだ。
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