捧げ物

□光を想う
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☆15555打を踏んで下さった涼香さまからのリクエストで
「佐助と姫(ラブ未満)」です。

こ、これは…!私も同じ気持ちで佐助を見てるので楽しみです!☆




     **********

「…と言う状況でございました。」
地面に片膝をつき頭を下げた佐助に、縁廊下に立った幸村は腕組みをしたまま
「そうか、分かった。ご苦労だったな。」
短く、けれど穏やかに告げた。言葉にせずとも、ゆっくり休め、と言う労いを込めて。
その様子を部屋の中から見詰めていた姫は、顔を上げた佐助がキッとこちらを睨むのとぶつかった。
姫には分からない、何かの任務の報告だろうが何も幸村がここに居る時に…
いやそれよりも、幸村こそ姫の前ではなく別の場所で報告を受ければ良いのに…と
つい、思ってしまう。

だって佐助は姫への敵意を隠そうとはしないのだから。

主従の枠を超えて、兄弟、友人として日々幸村と過ごして来た佐助にとって
それを打ち壊した姫は憎い相手のようだ。
顔を合わせると睨まれるのを姫は成すすべなく受け止めるしかない。
幸村の大事な家臣と思えば、何とかこの関係を改善したいと思ってはいるのだが。

   **********

「少し休めば良いのに。疲れただろ。」
鍛練場で汗を拭き拭き才蔵が言った。
透波たちが気合を込めながら其々鍛練する中で一人黙々と走り込みから戻って来た佐助が
息を深く吐いて、差し出された手拭いを受け取る。
「ちょいと駿河まで様子見に行っただけだ。疲れてなどいない。」
「随分と早いお帰りだったけどねぇ。よほど甲斐が気がかりなのかい?」
にやりと笑う才蔵を佐助が眉をしかめて睨む。
「どういう意味だ、気がかりなどあるわけが…。」
「そうかねぇー、ほぉら、お前の気がかりがやって来たよ。」
才蔵の視線の先には、何やら包みを抱えた姫が居た。
そして佐助の姿を見つけると、ちょっと緊張した表情で歩み寄ってくる。
「お前に用事みたいだよ。」
才蔵が笑顔のまま佐助から離れようとすると、ぐいと腕を掴まれた。
「…居ろよ。」
その声は小さくて、掛け合いの声が響く中で消えてしまいそうだったが才蔵には聞き取れた。
「お前なぁ…。」
呆れたような声を出しつつ振り向くと、姫はもうすぐ近くまで来ていた。
「…猿飛。」
「何だよ、こんな所に何の用だ。」
冷たく言い放つ佐助に思わず噴出しそうになった才蔵だが、何とか堪えて
「お前まだ姫に猿飛って呼ばせてんの?姫、こんな奴の言う事など気にせず好きなように
呼べば良いのですよ。猿でも飛びでも。」
と軽口をたたいたが佐助と姫には届かなかった。
「幸村がこれを、あなたに。疲れただろうから滋養のあるものを食べて休めと。」
差し出された包みからは微かに美味しそうな食べ物の匂いがする。
「幸村さまが、ねぇ…。」
才蔵が意味ありげに笑って佐助の顔を見る。
「そ、そうですよ?」
姫が慌てて応える。嘘が下手なのは頬の色で明らかだ。
「ありがたく受け取れよ、佐助!」
自分でふって置きながら、そんな姫を見かねた才蔵が佐助をつつく。
「…幸村さまのことづけなら。」
口を尖らせた佐助は乱暴に姫から包みを受け取ると
「用が済んだら早く戻れよ。」
そう言い放ってプイと背を向けた。
「…はい。では…あ、あの…。」
姫がその背に迷いながら続けた。
「遠くに出かけて居たのでしょう?…お疲れ様でした。」
姫には見えないが、佐助の顔が少し緩む。けれど
「さっさと行けよ、ここでぼやぼやしてると手裏剣が飛んで来るぞ!」
口調はいつものように厳しかった。
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