03/28の日記

22:43

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…生まれ変わったら、なにになりたい?

もしそう問われたら。

「俺はやはり、人として…男に生まれたいと思います。」

幸村ははっきりとした声で答えた。

「今もこうして男として生きている事に誇りを持っておりますから。」

それはまだ若いとは言え一国の重臣として相応の苦悩を繰り返しながら出た言葉だと、姫には思えた。

「…姫様は、なにに生まれ変わりたいとお思いですか…?」

けれど、己の事を話す時の声とは違う、少し落ちた調子で問い返してくるのは、答えを聞くのが怖いのだろうか。

「…私は…。」

姫は少し言葉を切って、そして顔を上げると幸村をまっすぐ見つめて言った。

「私は、次は姫などではない、ごくありふれた女子になりたいと思います。そして…。」

そして。

「姫ではなくても、良いのなら…幸村と…また…。」

それから先は、言葉にしなくても良かった。

幸村が答えるまでもない。

腕を伸ばし、ぎゅっと抱き締めればもう、それだけで良かった。

「来世も、俺と。」

「はい。」

「その次も…。」

「はい。」

ずっと、ずっと。

もしかしたら、今このひとときですら、先の世の約束であったやも知れない。

そんな事を考えながら、二人はいつまでも寄り添っていた。

   *******

 …甘。

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