04/01の日記

23:47

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「…と言う訳で姫、お前を迎えに来たのだ。」

客だと言うので広間に行ってみれば、満面の笑みを湛えた政宗が上機嫌で上座に座っていた。

「甲斐の親父も快諾してくれたし、なんの憂いもなかろう。さあ今すぐ奥州に旅立つのだ。」

姫が見ると、信玄も笑っている。

「まあ、同盟や領地など相応の便宜をはかる約束でな。姫には悪いが、奥州で幸せになってくれ。」

「…そう、ですか…。」

元々術もなく頼ってきただけの国であれば、仕方のない儚い身である事は承知の上だ。

姫はぺこりとお辞儀をすると、今までお世話になりました、と告げた。

「真田幸村が留守なのは幸いだったわ、さあ姫。」

政宗は満足そうに姫の手を取り、用意した輿へといざなった。

姫はそれに抗う事はしなかったが、ひとつだけ、と大きな瞳で哀願した。

「旅路のあいだ、甲斐の思い出を胸の奥に仕舞いたいと思いますので、どうぞ奥州に着くまで御簾を上げないで下さいませ。」

旅の間、顔も見れぬとは、と少々ムッとした政宗だが
信玄がううむやはり惜しいのう、と背中に呟いてるのを聞いて慌てて承知する。

やがて、姫を乗せた輿はゆっくりと動き出し、勝ち誇った顔の政宗は甲斐を後にした。

「うーむ、本当に幸村を使いに出しておいて良かったのう。あやつは…。」

「嘘がつけねーもんな!」

政宗たちの姿が見えなくなるまで見送った信玄が呟くと、門の影から五右衛門が笑いながら出てきた。
もちろん、姫も伴って。

「…でも、良かったのでしょうか…。」

「構わぬだろう、言って来たのは片倉だからのう。」

『南蛮かぶれの殿が、一日は嘘をつく行事だとか申しましてなにやら策を練っている模様です。ここらでキューッと仕置きをしたいのでどうぞお力をお貸し下さい』

そう直々に伝えに来た小十郎は、あの輿の中だ。

「…政宗様、驚かれるでしょうね…。」

姫が気の毒そうに言うと

「なに、国策まで嘘の材料にしてそなたを連れて行こうとした罰だ、後は片倉に任せればよい。」

信玄が笑う。

「我がそなたをあれくらいで手放すと思うなど、まだまだ青二才よ…。」

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えいぷりるふーる な甲斐。

御簾をあげて中の小十郎に口開けて見入る政宗。(笑)

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