04/04の日記

22:02

---------------
ふわり、とひとひら薄紅色の花びらが、信玄の持つ杯に舞い落ちた。

満たされていた酒とともにそれを飲み干し

「ううむ旨いのう。姫の酌ともなれば尚の事。」

すでに相当量を飲んですこぶる機嫌が良い。

「姫様、せ、拙者にも…。」

普段ならばそんな事は言わぬであろう幸村も、酌をせがんで杯を差し出す。

はい、と姫は桜の木の下で始まったささやかな宴に笑んでみせる。

すでに五右衛門は潰れてしまい、木の幹を背に眠りこけている。

「さあさあ姫、姫も一献。」

「い、いえ私は…。」

何度も差し出されて、信玄から杯を受け取ればなみなみと注がれてしまう。

上機嫌の信玄の手前、断れもせず口に含むと、また注がれて。

酒など飲んだ事のない姫はとたんに真っ赤になってしまった。

「ほほう、これはまたなんとも艶っぽいのう。」

「苦…っご無理はいけませ…っ」

喜ぶ信玄に、止めようとしても酔いの回る幸村。

それを見ながら、自身もくらくらしてきて、困惑していると、そっと抱き上げる腕があった。

「…お部屋にお連れします。」

静かな声に見上げると、それは素顔の才蔵で

背中に信玄が不満をぶつけ
幸村が頼む、と告げた。

「…ごめんなさい…。」

ありがとう、と続けたいのに意識がふわふわして口が動かない。

今まで感じた事のない浮遊感が気持ちよくて、姫は抱かれたまま目を閉じた。

「…姫様?」

眠ってしまった姫に気づいて、溜息をついた才蔵はそのまま姫の部屋に戻ると床に寝かせて掛け物を掛けた。

そしてじっと傍らに座っていると佐助が天井からストン、と降りてくる。

「何だよ、酔っ払ってんのか。」

「ああ、お館様も相当だからしばらくここで見張ってる。あの様子じゃ幸村様も止められそうにないし。」

「…見てくる。」

そう言ってふと、才蔵と姫を交互に見た佐助は

「…大丈夫、だな。お前なら。」

と確かめるように言うと姿を消した。

「…当たり前だ。」

しばらく間をおいて呟いた才蔵の目は、けれども姫の顔から離れはしなかった。


   *********

姫様が酔っ払ってしまったら。

奥州ならば小十郎、越後ならば景勝・兼続…あたりならば安全だと思うのですが甲斐は。

信玄様は言うまでもないですが、幸村も危ない(笑)
佐助はほったらかしてくれそうだし、五右衛門は自分が泥酔。
やはり素顔の才蔵が一番の常識人…な私のイメージです。

前へ|次へ

日記を書き直す
この日記を削除

[戻る]



©フォレストページ