04/09の日記

23:31

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朝目覚めると、身体が重かった。

熱っぽい気もしたが、たいした事ではないと自分に言い聞かせて起き上がり、普段どおりに過ごしていた。

皆は戦支度で忙しいのだから。

姫はいつもそばにいるはずの五右衛門ですら、姿を見せないくらい忙しさに自分ばかり休んでいられないと思う。

とは言っても何か役に立つと言う訳でもなく、ただここに居るだけ。

それなのに具合が悪いなどと言い出して迷惑はかけたくない。

気丈に頑張っては見たものの、やはりいつもそばに居る者にはわかるようで

「お顔が赤いですが熱があるのでは?」

昼餉の迎えに来た幸村に気づかれてしまった。

大丈夫です、と言う間もなく寝具が整えられ医者が呼ばれる。

ああ大げさな事になってしまって申し訳ない。

自分はどうしてこうなのだろう、と悲しくなってしまう。

戦場で槍をふるう事も出来なければ賄いをするわけでもない。

ただ屋敷に居て皆の帰りを待つだけしかできない情けない存在。

熱に誘われて思考がどんどん沈んでいく姫は、うとうとしながら自分のまわりに人々が来ては去るのを感じていた。

ごめんなさい、と何度も呟きながら。


翌朝、姫が目を開けると枕元に様々な花や菓子などがずらりと並んでいた。

「ああ、見舞いは待てと言いつけたのですが…。」

現われた幸村がその様子に渋い顔をして、そして笑った。

「皆、姫様が心配なのです。」

「私…。」

ここに居ても良いのでしょうか、と呟くように言うと幸村が驚いたように目を見開いた。

「どうしてそんな事をおっしゃるのです?姫様が居ない甲斐など考える事も出来ません。まだ熱があるのですね…どうぞ早く快癒なさってください。このままでは、心配で出陣できません。」

最後はにこりと笑いながら、その手を額に当てる幸村に、姫もふんわりと笑った。

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