04/11の日記

23:57

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長浜城は出陣の朝を迎えて高まる士気に燃えていた。

天下統一に向けて勢いに乗る秀吉に此度は参戦を求められた幸村は
未だ秀吉を主とは呼べはしないものの武人として礼をつくすために彼のために槍をふるう決心をした。

久しぶりに纏う甲冑は、苦しい雌伏の時を過ごして来た彼のもののふとしての血をたぎらせる。

いまこそ再び、ここに甲斐の幸村あり、と腕が武者震いする。

だが、気がかりがただひとつ。

それは見送る姫の、切なげな瞳だ。

無事に帰る事を信じては居ても、心配で生きた心地もしない様子だ。

「姫様。」

沸き立つ兵士たちに混じる前に、幸村が姫に近づいた。

とっくに、ひとときの別れのなごりは惜しんでいたがやはり何度惜しんでも愛しい人への思慕は募る。

「どうぞ、お心を強く。俺は必ず帰ります。貴女様の下へ。この幸村、決して約束は違えません。」

「幸村…。」

何度その心強い言葉を聞いただろう。

声音すら心地よい幸村の台詞に、つ、と流れそうになる涙をこらえ、そしてしがみ付きそうになるのすら耐える。

「信じています。きっと、きっと帰って来ると。」

「姫様…。」

そっと手を取り合い、見詰め合うその瞳と瞳には互いへの深い愛情がにじみ出る。




「…なんやわい、ごっつ酷い事あの二人にしてる気がして来たわー。」

秀吉が呟いた。

「…確かに……お二人を引き…裂く…非道な殿…のようですな……。」

「ああそれよりも早く出陣せねばそろそろ兵士たちがだれて来ておりますが如何致しましょうか殿。」

忠臣二人が秀吉に応えて言ったが、その言葉は秀吉の耳には届かない。

「えーなー、あの二人。なんやいくさが面倒になってきたわもう。やめや、やめ!」

わいも姫さんと遊ぶねん、と甲冑を脱ぎだした秀吉を慌てて止める二人の目には、それでもまだ独特の世界に浸る幸村と姫がうつった。

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