04/14の日記

22:52

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「…そして桃太郎はおじいさんとおばあさんの元へと帰りました。めでたしめでたし。」

姫が話し終わると、それまで黙って聞いていた佐助が激しく不機嫌そうに言った。

「いくらなんでもおかしいだろ。そんなでかい桃なんてあるわけねぇ。」

「いやそれもだけど、猿犬雉って、他に部下いなかったのか?」

五右衛門に変化した才蔵までが疑問視するので姫はちょっと困ってしまった。

生まれたときから殺伐とした世界で生きて来た彼ら、きっと眠りに入るために昔話など聞いた事もないのでは、と話してみたのだが。

「では、こんなのはどうでしょう。…昔々あるところに…。」


「はいっはいはいっ!さっきも聞こうと思ったんだけど、それってどのくらい昔?」
と今度は十蔵が手を上げて聞いてくる。

「…おじさいんが竹を切ると、そこにはまばゆいほど美しいお姫様が…。」

「小さっ!」
と海野が。

「そして浦島太郎は…。」

「そ、それはすいとんの術!?」
と三好兄弟。

「その打ち出の小槌は…。」

「そのようなものがあれば天下統一など云々」
とは六郎

それは変だそれはありえないと十勇士たちが騒ぎ出したので姫がああそれではもう今宵はこれくらいに…と言おうと思ったら。


「お前たち煩いぞ!このような素晴らしい話、黙って聞けぬなら部屋から出て行け!」

それまでずっと黙って聞いていた幸村が叫んだ。

そしてキラキラした目で姫に向き直ると

「最初からもう一度お願い致します!俺は…俺はそんな世界があるとは知りませんでした!」

とねだった。

「さ…最初から、今のお話、全部…ですか…。」

ちょっと途方にくれた姫だが、その期待に満ちた瞳に勝てるわけもない。

その夜、姫の部屋には一晩中あかりがついていた。


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今夜はお子様幸村。

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