連載パロディ3

□両思い証明論 下
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瞼と唇に、子供じみたキスを落とす。柔らかい感触は人間のそれとあまり変わらない。強いて言えば、ほんの少し、ひやりとするだけだ。
指で髪を梳きながら、小さな体を抱き込んでいくと、ぼうっと潤んだ目で誘うように僕を見上げた。頬がほんのり赤らんで、もっと触れたくなる。
男相手に、こんなことを思ったことはない。まして、大王は外見が外見だし、起動時間で言えばまだ赤ん坊だ。誘っているよう、なんていうのはこっちの思い込みだろう。

「鬼男君、頭が、ぼんやりする」
「え、あんたそれ、充電切れかかってるんじゃないですか?」

ん、と小さく呻く大王の体を持ち上げて、ズボンを下ろす。
小さな尻、人間でいう尾てい骨の延長線上にある小さなプラグ。目に見えて、人間ではない部分。そこを掴んで、コードを伸ばす。
途端、腕の中の体が硬直して、ああっ、と声を上げた。艶めいた吐息を吐きながら、小さな手が僕の肩を掴む。

「おにおく、熱い、あついよう」
「大王、」
「ん、」

肩に額を擦りつけるようにして、細い体が震える。そういえば、初めての自慰もプラグを引っ張ったのを呼び水にしていたっけ。
失敗だったかもしれない。
熱い吐息が、耳にかかる。震える腕が首に巻きついて、不器用に唇を押し付けた。

「ね、オレ、おかしいのかな。こうすると、気持ち、いいの。鬼男君は、嫌?オレのこと引っ叩く?」

は?と声が出る。爪でグリグリしたことはあれど、引っ叩いたことはない……そういえば、そういう場面を何度か目撃しているんだよな。思い出すと、少しおかしくなる。こんな幼い子供に修羅場を見られた男たちもとんだ不幸だけれど、そんな愉快な刷り込みを素直に受けているのが、笑っちゃいけないとわかっていても唇が笑ってしまう。
幼い顔に見合わないものを、たくさん見てはいるけれど、反応は子供そのものだ。今更、苦いものが喉元にこみ上げる。
気持ちいいっていうのは、好きだってことです、と口に出して言ってみる。当然だけれど、こんなことを説明したことなんかない。こっちもこっちで、いっぱいいっぱいだ。

「あんたが通報しないでくれるなら、もっと、その、気持ちよくしてあげたいんですけど…僕こそ訊くべきでした。あんたに触ってもいいですか」

赤く色づいた顔が、こくりと頷いて弛緩した。

セーラー服のタイを緩めて、下のボタンを外す。逸らされない視線が、一挙一動を見守るものだから、少し手が震えた。うっすら色づいた淡いミルク色の肌は、真白の布地よりも鮮やかに目を焼いて。
舌を這わせると、舐めるの?と小さな声が尋ねてきた。そうですよ、なんて、真面目に返すとなんとなく笑えてくる。
この少しの期間で蓄えた膨大なデータの中には、こんな当たり前のことはない。僕が一から教えるしかないんだ。
そのまま舌を這わせて、色の薄い胸の頂きに口付ける。高い声が上がって、細い指が僕の腕を掴んだ。

「そ、な、…レ、おっぱいないのに」
「あるじゃないですか、可愛いですよ」

まだ柔らかくて、色の薄いそれが僕の愛撫で形を変えていくさまは、不思議に感動的で。いろいろなものがいっぱいになって何も言えなくなる。
あ、あ、と短く上がる声に合わせて、ズボンを押し上げる小さな昂りを膝で押してやれば、一際高い声が上がって、その体が硬直する。何も知らないから、隠すことのない反応も、必死に縋りついてくる手も、堪らなく心地いい。

少しだけ、前に感じた危惧が頭を擡げる。この小さな頭の中で起こる、感覚を、感情を、造りあげたのは他ならぬ僕だ。だとすれば、自分で気づかないうちに、大王の気持ちを自分に向くようにしていてもおかしくない。これは、富んでもない、卑怯な自己愛なんじゃないかって。

「鬼男君、」

呼ぶ声が首筋に落ちて、直後、そこが濡れる。小さく尖った舌が、ゆっくりと下を目指していき、もたつきながらボタンをとり、胸に吸い付く。単調に、必死に。

「こうするの?おかしくない?」
「…えーと、あんたは今日は見学でお願いします。これ以上やられると、いろいろ問題ありなんで」
「え、ごめ、なさい」

わかっていないというのは、ある意味では最強かもしれない。
こっちの理性を粉々に破壊しながら、それでもと踏み止まらせる矛盾におかしくなりそうだ。大事にしたい、その反面で、このまま縛りつけておきたい。頭の中がぐちゃぐちゃになる。昨日から何度も何度も、同じことを思っていた。

ズボンを剥ぎ取り、べっどの下に捨てる。露わになったそこは、モニタ越しに見たよりもずっと立派に上を向きながら、震えていた。
少し腰を浮かせて、尻を支えるようにしながら、そこを咥える。

「ひゃ!あ、鬼男君、そこ、食べちゃ、め、あ、ぁ!なめ、ないで…ぅ、ぁ、ぁ、」

すぐ脇にある両脚が震えて、小さな手が僕の頭を掴む。
程なくとろりとしたものを溢れ出させながらビクビクと体が痙攣した。出されたものは、ひどく甘い。似ている粘度のものがなかったからとかで、ホンモノの練乳を使っているから仕方がないのだけど、それが妙に似合っていて。肌を舐めて同じ味がしないことが逆に不思議なくらいだ。
さらに続けていけば、反応のいいそれはまた硬度を高めて、僕の上顎に擦りつく。
唾液と愛液を絡めて、後ろにゆびを押し当てる。絶えず声を上げていた体が、ビクリと強張り、今度こそ悲鳴じみた声が上がった。

「おにおく、」
「これでいいんです。大丈夫ですから、ね、大王」

こくりと頷く素直さが、少しばかり怖いくらいだ。
当たり前だと刷り込めば、どんな倒錯的な行為でも、大王は受け入れるだろう。
卑怯な自己愛。身勝手な押し付け。そんな言葉が頭を過る。
だけど、今は、ただ純粋に、たまらなく、目の前の彼が欲しい。

「大王、つかまってください」

指を抜いて、ぐしゃぐしゃに濡れた昂りを握り込む。秘孔に押し当てられた、怒張しきったソレを見留めて、赤い目が見開かれた。

「それ、そこに、はいるの?」
「はい…」
「ほんとに?え、壊れたりしない?」
「本当に。他ならぬ僕が保証します。だから、一緒に気持ちよくなりましょう?」

こくん、と頷く顔に、口付けを落とせば、頬の線が和らいだ。柔らかくて、子供らしい丸みに、チクリと胸が痛い。けれど、その線をなぞりながら、腰を進める。熱い。今まで感じたことがないくらいに熱くて、果てがない。

「ぁ、ああ!おにおく、いっ、」
「大丈夫、大丈夫ですから」

首に丸い爪が食い込む。ぎゅうっと閉じた目は相変わらず涙を零さないけれど、強張る体は明らかに異物を拒絶する。萎えかけている前を刺激して、あどけない胸を摘まみあげて、そこが解けていくのを待つ。すっかり熱を帯びた体が、熟れていく。
溶け出しそうなほどの悦楽と、征服感に溜息が漏れた。

「んっ、んぅ、ふ、」

膝を曲げる脚は球体でジョイントされていて、僕に縋る手も指も、普通のそれよりずっと固いけれど、この体は確かに僕と繋がっていて、快感を共有している。それが、不思議で、感動的で、いろんなものが入り乱れながら、僕を動かす。

「排熱管が、きゅうきゅうするよぅ、あ、また出ちゃいそう、あ、ぁあ!おにお、く、壊れちゃ、ます、ちゃんと確認してく、い」

少し硬い髪が、頬に当たる。ビクビクと、魚みたいに跳ねる体に、あの水槽を思い出した。
大王と世界を繋ぐモニタと、僕らと大王を隔てる水の檻。一人でたゆたいながら、たまにこっちを見て手を振る。それだけだったはずなのに。
その彼が、ガクガク頭を揺らして、突き上げる度に手を濡らし、縋りついて甘い声を上げている。
言葉が口をついて零れる。

「好きですよ、もう、僕も限界、」
「あ!ぁあっ、ん、ん!ひぁっ、ぁ、あ、あ、」

貫いた体が、収縮して激しく震える。弾けた前が甘い匂いを撒き散らす。
真っ赤に染まった顔に、僕の汗が滴り落ちて、乾いた目を濡らした。

「に、にがい、」
「は?」
「おにおくんの、変な味…」
「…それ、今言うことかよ」

やがて痙攣が止んで、弛緩した体を横たえると、ほんのり、彼は笑った。これが、好きの次なんだね、と小さな声が耳を優しく揺する。
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